戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
やはりこれでしか反応の変わらない私の存在は、ロボット男にとって体の良い婚約者でしかない。
「あー、訳わかんない…!」
こうしてイヤミと身勝手さを纏った男へ近づけば近づくほど、どうしようもない孤独感が募るだけなのに。
そんな私の一言すら呑みこみながら、ゴーッと一定音を響かせて高速で走る新幹線は、当初の目的通りにどんどん東京から引き離して行く。
機械的なアナウンス音によって、次の停車駅名が傍らに聞こえてくるが、無関係な所はハッキリ言ってどうでも良い。
「早く降りて下さい」
「いや、ぜったい降りない」
「貴方は子供ですか」
「そうですね。アナタよりは若いですし」
「そうですか、単細胞なだけに思いますが」
先ほどから淡々と押し問答を続けていれば、身体で感じるほど落ちて来た速度によって、徐々にデッキへと降車客らしき人々が来ている。
それにも構わず携帯電話を通じての言い合いはみっともない気もするが、どこまでも失礼なロボット男の発言で早くもプチンと頭の中で何かが切れた。
「えーえー、何とでも言えば。とにかく目的があるのよ、そこに行くまで…」
「ああ、名古屋ですね」
「っ、何で?」
秘書室で会った福本さんに負けじと、フンっと鼻息荒く言い逃げするつもりが。
淡々と紡がれた地名のせいで、それより早く声を荒げる事態となった。