ご主人と使用人
「なにこれ……」
少年は驚いたのか、私の胸をわしづかみにして顔を上げた。
ドアの前は少し段差になっていて、私の方が目線は高い位置にある。
だが、それにしてもその少年は小柄だった。
「明様、どうなさいました?」
後ろから住友さんが声をかけた。
少年は私の胸だとわかるのに少し時間がかかったが、それに気づくとパッと手を離し、顔を真っ赤にして目をそらした。
「スミレさんいないから救急箱の場所、わかんない」
よっぽと恥ずかしかったのか、それとも救急箱の方が大事だったのか、
私を無視して住友さんのもとに駆け寄った。
見ると、少年の腕に大きな擦り傷ができているのが見えた。
「それ、そのまま消毒しちゃだめです。きちんと砂とか汚れを落とさないと」
私はそう忠告しながら思わずその腕をつかみ、まじまじと見た。
範囲が広いだけで大して深くはないようだ。