ご主人と使用人
働きます
「おはようございます」
約束の時間にアパートの外に出ると、住友さんと遠藤さんが迎えに来てくれていた。
遠藤さんは私の荷物をトランクに積んでくれて、住友さんは車のドアを開けてくれた。
「……あの、私も今日から使用人なわけですし、そんなに気を使っていただかなくても……」
私の訴えも虚しく、
「いいえ、最低限の礼儀は相手がどなたであろうと、わきまえなければなりません」
と言い放たれてしまった。
だからその礼儀とやらが最低限じゃないんだよなー……。
むしろ、最上級ですよ。
私の小さなため息にも気づかず、住友さんは雲雀ヶ丘家までの道中、ご主人のことやその息子や娘、使用人について少し説明してくれた。
ご主人はいくつかの宝石店を経営する会社の社長で、今は奥様とアメリカ支社にいるらしい。
年に数回帰って来るんだとか。
息子は三人、娘は一人いて、
娘は結婚していて屋敷にはいないんだとか。
息子は高校三年生の双子で、名前を兄が奏(かなで)、弟が遙(はるか)というらしい。
それと明様。
使用人は30人ほどいて、メイドは8人いるらしい。
私が9人目だ。
他にも色々話してくれたけど、私が覚えられたのはこれだけ。