夢渡り
逃げなければ。
そう思っている、理解しているのに、足が動くことを拒んでいるのだ。

彼は息を吸い込み、微笑みながら、こう吐いた、

「僕の名は、キハクだよ、ジュン」

ガタン、ゴトン

その瞬間、わたしはすべてを思いだす。
わたしと彼のすべてを。
馬鹿みたいに己の能力が消えることを望んでいた、自分の姿を。
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