夢渡り
…彼は一体、何者だったのだろうか。
幽霊?―いや、ちがう。
そんなちっぽけなものではなく、もっと、大きな、なにか。
それがなんなのかは私にはまだわからないが、

私は確信した、彼には―一度、いや、何度も―会ったことがある、と。

私の中の何かが云っているのだ、
先ほどの既視感が、それを物語っていた。


―彼にもう一度、会いたい。


数分前に思っていたものと矛盾している思いが私の脳内を駆け巡った。

できることならもう一度、もう一度だけでいいから、会いたい。
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