チェリーが毎年クリスマスに想うこと
第7章
・・・・・・・・あっという間に
時は過ぎ、《 cherry books 》の
窓から見える景色も
色が変わっていた。

夜毎、通った【キッチンみなかわ】も
改装をはじめ
クリスマスまでには完成するらしい。

私は、外のテラスで
地元紙12月号の原稿を書いていた。
タイトルは「クリスマス」の思い出。

私は昨年のクリスマスから
1年、あれよあれよという間に過ぎ、
両親が死んで、
ばあちゃんも死んで一人になったのに
悲しむ余裕すらなかった。
悲しみたくなかったから
忙しいふりをした。
枯葉が時々舞、
ホットコーヒーが美味しく感じ
時間がゆっくりと流れるのを
実感すると、
急に悲しみが込み上げる。

子供の頃はクリスマスにはいつも
本をプレゼントしてもらった。
仕掛けが沢山詰まった「飛び出す絵本」

19歳のクリスマスからは
ヒロと毎年過ごした。

ヒロには毎年プレゼントにカードを付けた。
「来年のクリスマスも愛していてね」って。
毎年、毎年、同じメッセージで。
思えば8回も
クリスマスを一緒に過ごした。
人生の中で8回というと
意外に多い。

ヒロには指輪やネックレスを貰った。
安物だったけど
ヒロが私の事を思って選んでくれた
大切な宝物。

そういえば、まだとってある。

ヒロとの別れと
両親との別れが
いっぺんに来て、ヒロのこと
思い出して泣くこともなかった。

そういえば、何故、あの日
ヒロは待ち合わせに来なかったんだろう・・・・。

聞いてなかった。
聞く暇もなかったし。
勝手に捨てられたと思ってたから。

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