チェリーが毎年クリスマスに想うこと
第3章
私は、クリスマスに一度に3人も大切な人を
     失った・・・・。

同級生の大工のかわちゃんにお願いした
本屋の改装は
着々と進んでいた。
これなら、夏前までに開店できそうだ。

ばあちゃんは、もうボケていて
父ちゃんと、母ちゃんが死んだことすら
分からなかったが
わざわざ一から説明するつもりもなく
ばあちゃんの言うことに
「そうだよ~、そうだよ~。」とうなずいていた。
ばあちゃんは、二人が旅行から帰ってこないから
私に探しに行けと毎日言ってた。

言い忘れていたが、
私は、25歳の時、小さな小さな賞をもらい
派遣で働いていた出版社の好意で、
週刊誌のコラムやフリーペーパ
漫画本のおすすめコーナーなど、
小さい仕事をもらい
雑用のほかにも収入があった。

物を書く仕事は、
どこでもできた。
インターネットというハードがあるからね。
しかし、本屋はここでやるしかない。
私は、本屋の娘だ。
インクの匂いを嗅いで育った。
このまま簡単に
本屋は潰せない。

田舎に戻ることは
両親の願いでもあったし、
もしかすると、
地元で家業を継いで
結婚し、好きな本に毎日囲まれて
生活するのは
私の一番の願いだったのかもしれない。
結婚相手は
物静かで、本が好きな男性がいい。

< 8 / 22 >

この作品をシェア

pagetop