何時も君が私を見てる。

「俺がついてるから安心して眠って」


ベッドに入るなり、床に胡座をかいた彼は穏やかな声で呟いたわけだが、これから寝ようと思う私の心中は穏やかとは程遠い。


「帰って下さい」

「わかった。外でずっとなおのこと見てるね。おやすみ」


「行かないで下さい。外で見張るってことですか?貴方はストーカーですか」

「恋人を変質者扱いするなんて酷いなー。ただ俺はずっとなおを見ていたいだけだよ」


人の三大欲求のうちのひとつ。睡眠をあっさり捨てた彼は『私のため』と名をつけ異常を正当化する。

「あなたが私のせいで眠れないなんて、私のために寝て下さい」


本心は違う。

私のためと言われても睡眠を捨ててまで守られる(または見守られる)価値は私にはない。それが例え『恋人だから』だとしても彼のような感情は異常でしかなく、私からしたら迷惑いがいの何物でもないわけで。

だから早い話『大人しく家帰って寝ろ。』だ。


何処まで伝わったか。

夕明さんはベッドの上に肘をつき、私を見つめた。

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