シュールな悪魔に愛を
「あ、そうだ。本…。本を開いた途端に、目眩がして…あれ?本が無い…」

楓は身体を起こし、辺りを見回した。

「本なんて無かったぜ。お嬢ちゃん、幻覚でも見たんじゃねぇの?さっきも、本が落ちてるとか言ってたもんな。」

若い男が笑う。

そんな筈無い。確かにあったもの…

表紙を摘んだ時の、皮の質感も重さもハッキリ覚えている。
楓は本のあった場所に顔を近づけ、砂埃で汚れたアスファルトの上に本の有った形跡が残っていないかと目を凝らした。
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