シュールな悪魔に愛を

「ウソでしょ…」思わず声をあげた。

楓は急いで鍵を取り出して玄関のドアを開け、自分の部屋へと駆け込む。
バックの口を広げて逆さに持ち上げる。中身がフローリングの上に転がり散らばった。
財布、携帯、定期入れ、と一緒に転がり落ちたのは…間違いない、フリマで見つけた黒革の洋書だった。

その横に、黒い艶やかな羽根が1本。楓が手に取った瞬間、サラサラと灰のように崩れて消えた。


「質素な部屋だな。」

背後で不気味な重低音の声が聞こえた。そして息苦しい異様な気配。振り返った楓の目に映ったのは、真っ黒く微かに揺らめく大きな陰だった。