隣の秀才君
空気が読めない秀才君
「ちょっと朔夜、さっきのイケメン誰なのっ!」
机に鞄を置いた瞬間いきなり加代子がずずいっと威圧的に問い詰める。
「イケ…メン…?」
「しらばっくれないでよね!さっきまで一緒にいた茶髪のイケメン。窓から見てたんだから」
なるほど、速水のことらしい。確かにうちの教室からなら正門がよく見えるし、目立ってたのか、他のクラスメートも集まって来た。あー、めんどくさ。
「あー…あれはその、何だ、知らない」
「うっそだぁ!じゃ、何で一緒にいたのよ」
「道に迷ってたみたいだから案内してあげただけ。そんだけ」
我ながら良くできた言い訳だと思う。興味津々だったクラスメートはすぐさまつまんなそうに散った。ただ加代子1人はむー…と少し不満げだ。
「ねー、それホント?」
「ホントホント。知り合いじゃなくてごめんね」
椅子に座る私を見てた加代子は心底残念そうにため息をつく。
加代子はイケメンが好きだから、私の知り合いなら紹介白とか面倒なことを言い出すつもりだったんだろう。
「はぁ~ぁー…」
しつこくため息を零しながら彼女は自分の席に戻っていた。すまん、加代子。
ちょうど加代子が席につくと、担任の渡部がやって来た。
渡部のダルそうな声で朝のHRが始まった。