十五の詩
倒れ込んだユニスの身体を抱き起こそうと触れると、イレーネの中に洪水のような異空間の波が押し寄せてきた。
どくん、と心臓が音を立てる。
(これは何──?)
突然今までいた世界と違う次元に放り出され、イレーネは立ち尽くす。
『レミニア先生──』
誰かが泣き崩れている。
眠っている女性の顔が映し出された。
ひどい怪我を負っている。無数の傷を受けているのが見えた。
その女性の手に光るもの──。
(ああ、この指輪だ…)
やはり、と思っていたこととひどく悲しい気持ちが胸に押し寄せてきた。
その女性を慕っていた思い。何故守れなかったのかという憤り。
(指輪の人は、帰らない人になってしまったんだ──)
イレーネはいつのまにか泣いていた。
泣き崩れているのは──ユニスなのだ。
そこまでで異空間の映像は途切れ、イレーネの視界はまた平常のものに戻っていた。
気を失っているユニスの顔を見て痛ましい気持ちになる。持っていた指輪を取り出すとユニスの手に握らせた。
「大事なもの、返すね」
ここが人気の少ないところで良かった──。
イレーネはユニスのそばの草の上に座り込んだ。
愛馬が心配そうに見ている。イレーネは笑った。
「予定が狂ってしまったな…。しばらくここで休んで行こう」
*