十五の詩



 倒れ込んだユニスの身体を抱き起こそうと触れると、イレーネの中に洪水のような異空間の波が押し寄せてきた。

 どくん、と心臓が音を立てる。

(これは何──?)

 突然今までいた世界と違う次元に放り出され、イレーネは立ち尽くす。





『レミニア先生──』

 誰かが泣き崩れている。

 眠っている女性の顔が映し出された。

 ひどい怪我を負っている。無数の傷を受けているのが見えた。

 その女性の手に光るもの──。

(ああ、この指輪だ…)

 やはり、と思っていたこととひどく悲しい気持ちが胸に押し寄せてきた。

 その女性を慕っていた思い。何故守れなかったのかという憤り。

(指輪の人は、帰らない人になってしまったんだ──)

 イレーネはいつのまにか泣いていた。

 泣き崩れているのは──ユニスなのだ。





 そこまでで異空間の映像は途切れ、イレーネの視界はまた平常のものに戻っていた。

 気を失っているユニスの顔を見て痛ましい気持ちになる。持っていた指輪を取り出すとユニスの手に握らせた。

「大事なもの、返すね」

 ここが人気の少ないところで良かった──。

 イレーネはユニスのそばの草の上に座り込んだ。

 愛馬が心配そうに見ている。イレーネは笑った。

「予定が狂ってしまったな…。しばらくここで休んで行こう」



     *



< 29 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop