十五の詩
プラタナスの並木道が真っ直ぐにつづく通り。白い石畳にところどころ葉や実が落ちている。
金髪のユニスと銀髪のイレーネとが並んで歩いていると、ふたりを振り返ってゆく者は少なくはない。人目をひくふたりなのだ。
「──大丈夫ですか?」
ユニスがイレーネに聞いた。
「大丈夫というと?」
「私のルームメイトはヴィンセントなんです。あなたはヴィンセントの許婚者だと聞いているのですが。私とふたりで歩いて問題はありませんか?」
イレーネは目をまるくした。
「ヴィンセントの?そうなんだ。──心配しないで。大丈夫だよ」
「それならいいです」
「ヴィンセント、真面目な人だよね。ヴィンセント自身の話も聴いたりする?」
「はい。つい最近なのですが。お互いにそういう話をしたりはしますね」
「そっか…」
イレーネが自分のことのように嬉しそうな表情になる。ユニスは興味をひかれて尋ねた。
「ヴィンセントのことは好きですか?」
「そうだね…。関係上は許婚者だけど私より5つも上だと兄がいたらこんな感じなのかなと思ったりする。好きかと言えば好きだけど恋かと問われると違うと思う」
自分よりも年下の少女が恋を語る前にそんなことを語っているのを見て、ユニスの胸にはこれでいいのだろうかという疑問がよぎってゆく。
人間的な感情を知ることもないままに、こんなふうに檻の中にでも閉じ込められるかのように。
が、その疑問はイレーネも抱えていたのか、イレーネ自身がユニスにそのことを問いかけてきた。
「ユニスは?王室の生まれだと許婚者の問題とか話に上ってこない?」
「そうですね…。私は今は国を離れているので、現実的にそういう問題を肌で感じることなくいられるのですが、国に戻ったらそれは嫌でも考えさせられるかもしれません」
「──。心は好きな人のそばにいたいのにね」
何か思うところあるように、イレーネが呟いた。