十五の詩
いつも足を運んでいる薬局を訪れると、店主はユニスを見て目尻を細めた。
「いらっしゃい。──今日はいいものが届いているよ」
奥まった棚をがさごそと探し、一通の封筒と小瓶を出してくる。
「何ですか?」
店主は答えずににこにこしている。ユニスは封筒を手に取り、差出人を確認した。
──ノール・メイエ
ユニスの喜ぶ顔が見たかったらしい。パッと表情を明るくして顔をあげるユニスに、店主も嬉しそうにうんうん頷く。
「さて。──いつもの薬でいいかね?」
言いながら店主の視線がユニスの後方で止まった。
「…おや。ユニス様、今日は女の子をお連れかね?」
イレーネは控えめに一礼した。
「同じ学舎の生徒です」
「フェセーユの?向こうは男子しかいないと聞いているが」
「私は王宮騎士になりたいので…。騎士になるためのカリキュラムが組まれている学舎は限られているのです」
「なるほど」
そこでユニスが店主に「スフィルウィング家のご令嬢です」と話した。
店主は驚いてイレーネをまじまじと見る。
「スフィルウィング?イレーネ・スフィルウィングかい?いやはや…。このような方をお連れとは、ユニス様は今日は公務で?」
「いえ…ここに来る前に少し事情があって。私の体調が優れないのでついてきてくれたのです」
「ふむ…」
店主は髭を触りながらイレーネの気を見た。
「確かに‘癒しの気’がきわめて良い。危機を感知する能力にも秀でておいでかね?イレーネ嬢は武術にも才覚がおありだと聴いているが、高い感覚能力まで併せ持った騎士はなかなかない。これなら社交界にお出になるより国の騎士団の方が欲しがるのもわかる」
「──どうでしょうか。私を歓迎しているわけではない者も少なくはありません」
「そりゃあ何処に行ったってそういうものだ。有能な者はとやかく何か言われよる」