十五の詩
それにしても、と店主はユニスの顔色を見る。
「ユニス様の体調が思わしくないとはわからなかったよ。確かにユニス様だけを診てみると魔力が不安定なのは微弱に感じとれるが、イレーネ様の気がユニス様によい影響を与えとる」
「え?私は特に今は白魔法の力を行使しているわけでは」
「そうかね?なら気の相性が合っているのかもしれんな。うまく言えんが──そう、精霊と主人のようなものかもしれん」
守護精霊がいるユニスにとっては、そのたとえはわかりやすく腑に落ちるものがあった。
「精霊──そうですね」
店主とユニスの様子にイレーネは困惑する。
「精霊と言われても…」
「ははは。難しく考えなさんな。感覚が強い者は感覚で自ずと識るに至る」
ユニスもその言葉に笑った。
「はい。私の体調が優れないのを感知して探しに来てくれたり、荒くれ男を前に動じなかったり──人を包み込む何かを持っている人なのだと思います」
「荒くれ男?ここに来るまでに何かあったのかね?」
店主が顔をしかめる。
「はい。体調が優れないところをつけこまれたようです。不注意でした」
「やれやれ、ならず者は減らんな…。ともかくユニス様が無事で良かった。ということは荒くれ男を撃退したというのは…」
「はい。イレーネです」
「ほう…」
店主は感心したようにイレーネを見た。
「イレーネ様が精霊的なのはもしかしたら道理なのかもしれんな」
「精霊的…?精霊と似ているんですか?」
「ならず者に立ち向かえる者など、そう多くはない。護ろうとする本質が精霊的なんだよ」
ユニスもそれに頷いた。
「あなたは傷ついている人を見ると見過ごせない性質なのでは?心配になって手を差しのべてしまうことがあると思うのですが」
「──」
ユリエに問われたことと同じことを、ユニスにも問われた気がした。
理由がない、そうしたかったこと。自然に手を差しのべてしまう心。