十五の詩



「──今までそれがふつうのことだと思っていたけど…」

 イレーネはそう言いかけて、先刻ユニスを襲った者たちのことをふっと思い出した。

「傷つけても痛みを感じない者も少なくはないんだろうか?」

「そうですね。それがふつうであったり、必要であったりする人もいます」

「必要…」

 同列のふつうのことのように考えていいのだろうかという疑問はおさまらなかった。

 店主はユニスとイレーネとを見て、まず自分の感覚を識ることさ、とシンプルな言い方をした。

「毒が薬にもなり、薬が毒にもなりうる。癒しも行き過ぎると物事を狂わせる。過ぎないためには感覚を識ることだ」

「感覚を識る…」

「感覚を識らぬ者に感覚ある者の判断が出来ると思うかい?」

「いえ」

 いらずらっぽく笑う店主にイレーネも笑った。

 いつのまに整えたのか、店主はティーポットを手にカップに温かいお茶を注いでいる。

「さあ、可愛いお客さんたち。飲んでからお帰り」



     *



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