十五の詩



「いったい何を考えている?俺に頼んだ仕事はただの冷やかしか?」

「眠らせて連れ帰ることを条件にはしていたが、恐らく無理であろうとは見ていた。だがこれで生粋のリオピアの血を引く者の実力が如何程のものであるかははっきりした。上官魔導士ともなればむやみに手合わせを願い出たりはしない。真っ向からそのような闘いを望む者は本質がその程度なのだ」

「は。魔導士のプライドやら本質やら価値観やらはどうだっていい」

「お前が魔導士と対峙する時それを軽んじようと、こちらにもどうでもいいことだが…。魔導士の本質は、その者がどれほどの魔導の力を有しうるのかに直接影響する。軽んずる者は痛い目を見るぞ」

「そうか?なら今までに俺に倒されてきた魔導士はどう説明する?俺はそういうことを考えることもなく、今まで勝ってきた。だから訊いている。あれは何だ?リオピアの人間はあのレベルの魔導の力をふつうに使うのか?」

 レガはめずらしく真剣に熱り立っている。これまで自分のやり方と腕で対峙出来ない者はいなかった。

 それがユニスにはまるで通用しなかったのである。

 ベルヘイムはたしなめるように言った。

「そう息巻くな。リオピアの人間の魔法能力は確かに高いが、あれは無論リオピアの人間の中でも格上の部類だ。父親のユリウスがその先代王の実子でもないのに先代王の後押しを受けられたのは、魔導の力と世を見る力が常人より遥かに優れたものを持っていたからだと言われている。リオピアはこれまで魔導の力で自国を守ってきた。魔導の力と先見の明を持つ者に玉座を託すのは国の存続のためでもある。そうして選ばれてきた者の子が優れた遺伝子を持つのは自然の摂理だ。だが──あの者は父のユリウスをさらに超えた力を持っているようだ」

 レガは眉をひそめた。

「なら、お前らアレクメスの上官魔導士が束になってでも、なぜあれの息の根を今止めておかない?俺には理解できん」



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