十五の詩



 一方、ユニスの祖国であるリオピアの王宮では、店主からの連絡が入り、ユニスがならず者に襲われたようだとの話の内容にちょっとした騒ぎになっていた。

「ノール様、本国から何名か護衛に派遣した方が良いのでは?治安の良いハリスモンドでユニス様が襲われるとは、ユニス様の身分を知っている者の犯行かと」

 ノールは机に頬杖をつき冷静な面持ちでそれを聴いていたが、「少し落ち着きなさい」と諭すように言った。

「ユニス様ご自身から要請がない限りは何もしないでほしいとの命を賜っています。いざとなればユニス様の一声で動く者もアレクメスには送り出している。これくらいのことで動じていては、敵にも手の内を読まれてしまいかねない」

「ですが」

「下がりなさい。ユニス様には私から聴いてみます」

「はい」

 大臣は一礼をし、ノールの私室から下がった。

 ノールは幼き日に同じ時を共に過ごした王子のことを思い、呟いた。

「──ユニス様…」



     *



 ノールの正式な名はノール・メイエ。セレクヴィーネ王家とは血の繋がりのない庶民の家の出である。

 宮廷にあがることになったのはユリウスに見出だされたからなのだが、目をかけられた理由がノールのその容姿にあった。

 ノールはリオピアの民でありながら、ユニスと同じ金髪碧眼だったのである。

 リオピアの民は黒髪が国民の九割を占め、両親共にリオピアの民である場合、金髪の子が生まれることはまずない。

 ところが、ユリウス王と王妃ファスティーナはふたりとも生粋のリオピアの血を引いていたのにも関わらず、ユニスは突然変異の金髪碧眼であった。

 ファスティーナが王ではない他の男と通じているのではないかとも疑われ、遺伝子も調べられたが、遺伝子上はユニスはユリウスとファスティーナの子であることがわかり、その時ユニスは初めて王と王妃の子だと認められたのである。



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