十五の詩



 だが王の座を狙う者の中にはユリウスを失脚させようと、遺伝子上実子だという話は嘘なのだと言う者も少なくはなく、家臣の中にはあからさまにユニスにつらくあたる者もおり、ユリウスを悩ませた。

 ユリウスは自身の手でも数ある文献をあたり、過去に同じような事例がないかを調べあげた。

 すると、最も古い文献のひとつにリオピアの民は元々は金髪碧眼であったという記述が出てきた。

 魔導の力の本質を妖華に支配され黒髪の民になったというのである。

 黒髪の民がその支配を破るには時と選ばれた者とが必要だった。

 その選ばれた者は、金髪碧眼を持って生を受けるというのだ。

 ひとりは予兆として先に顕れ、後からくるもうひとりが選ばれた者だと。

 ユリウスは今や架空の伝説にも思えるようなその古い文献の記述に、これかもしれないと思った。

 そしてごく少数の信頼のおける魔導士数人を呼び寄せ、ユニスのような金髪碧眼のリオピアの民がいないか探させたのである。

 探させた結果、ユリウスの予感の通りになった。

 ノールという金髪碧眼の子が、ひとり見つかったのである。

 ノールはユニスより4つばかり年嵩で、庶民の子であるということだった。

 ユリウスはノールがどのように過ごしているのかが知りたくなり、自分の目で見てみようとノールの住んでいるところまで足を運んだ。

 だが──訪れて目にしたのはひどく虐げられているノールの姿だった。

 黒髪の者たちの中でたったひとり髪の色が違うノールは、王宮でユニスを罵倒する輩と同じで、私生児ではないかと噂されていたり、兄弟から殴られたり、母親からも疎まれている様子であった。

 日がすっかり沈みきっても家に入ることが苦痛で、ノールは道の脇の岩に座り声もあげず泣いていた。

 ユリウスは驚かせないように静かに歩み寄って行った。

「──ノール・メイエか?」

 子供のノールは顔をあげた。

 見たこともない綺麗な衣服に身を包んだ青年が、目の前に立っていた。



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