十五の詩



 フェセーユの校舎が見えてきたあたりで、ユニスがイレーネに言った。

「先にどうぞ。指輪をありがとうございました」

 イレーネの名にも、婚約者であるヴィンセントの名にも瑕をつけないようにとの、ユニスなりの気遣いだろう。

 イレーネは頷くと名残惜しそうに言った。

「私もありがとう。今日は楽しかった」

「楽しかった?」

「うん。ユニスは?」

「──楽しかったです」

 めまぐるしくいろいろな事が起こり過ぎて、その言葉ひとつに集約させてしまうのがもったいないくらいに。

 ユニスがイレーネの手の甲にキスをすると、イレーネは嬉しそうに言った。

「身体、大切にしてね。今度食事が出来るといいね」

「はい」

 しなやかな細身の身体が踵を返した。軽やかな足取りで校舎に戻ってゆく。

 それを見送ってユニスは寮へと戻った。



     *



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