十五の詩
ノールからの手紙と小瓶とを枕元に置くと、ユニスは自分もそのままそのそばに横になった。
出かける時ひどかった頭痛が、嘘のようにひいている。
(あんなにひどくなると、いつもならそう簡単には回復しないのに──)
指輪を取り出して、ユニスはいつしかイレーネのことを考えていた。
『マスター、姿をとっても?』
ユリエの呼びかけにユニスは「はい」と応じた。
ユリエの姿が現れ、横になっているユニスのそばに座る。
「ご気分は?」
「よくなりました。──ユリエ、彼女は何者ですか?」
「……?何者かとは、イレーネ様のことですか?」
「はい。白魔法を使う方の気はこれまでに何度か見て来ましたが、彼女はそれが飛び抜けて高いような気がします。──彼女の気はアレクメスのものというよりも、もっと北の…。ハロンあたりの」
「ハロン──」
ハロンは形見の指輪の女性──レミニア・アイスラルフの出身国である。
幼少時よりその気に間近にふれてきたユニスには、魔導の力の質によりハロンの者であるのか、そうではないのかは容易に見分けがつくようであった。
「イレーネ様がレミニア様と近い気であると?」
ユリエが問うと、ユニスは起き上がり考え込む表情になった。
「ハロンも広大な国なので断定は出来ませんが…レミニア先生とイレーネの気はかなり近いようです。でもスフィルウィング家の血縁関係者にハロン出身の人物がいたか、思い当たらないのですが」
「……」
となると、イレーネはスフィルウィング家の実子ではない──?
ユリエもそれはすぐに思い至ったことであるのか、やがてユニスを真っ直ぐに見た。
「マスター、このお話は出来るだけなさらないように。イレーネ様個人だけではなく、スフィルウィング家やアレクメス王家に関わることであるかもしれませんから」
「そうですね」