イケメン御曹司の秘密の誘惑
人垣を掻き分けて、冴子さんがおずおずと歩み出て来た。
真っ赤な顔をして、グッと涙を堪えている。
「冴子、データはお返ししても良いな…?
今度ばかりは我が儘を許す訳にはいかないぞ…。
私はお前も、月野さんの様に愛されて結婚してほしいんだよ」
父親の厳しくも優しい言葉に彼女は堪えていた涙を一気に流し始める。
「……はい」
小さな声でそう言ってから彼女はその場で泣き崩れた。
私はその姿を黙って見下ろしながら、彼女も、私と同じように潤の魅力にとり憑かれた、ただの愛されたい女なんだ、と思っていた。