イケメン御曹司の秘密の誘惑

「再来週…、婚約するから」

「…え」

ボンヤリ見惚れていた唇から、突然に飛び出す言葉。

…婚約。

もう……そこまで…。
それは私達の甘く揺らめいていた時間が、終わる事を意味している。

……泣かない。
泣かないわ。
笑って“おめでとう”と言うの。
私は大丈夫だと、あなたなんかいなくても歩いていけると。

……だけど、私は女優なんかじゃない。
大根芝居で彼を騙しおおせる訳がないわ。

「……」

何も言えずにただ、黙る。

重く、冷たい沈黙が、先ほどの甘く気だるい空気を急激に覆っていく。




< 38 / 160 >

この作品をシェア

pagetop