イケメン御曹司の秘密の誘惑
「再来週…、婚約するから」
「…え」
ボンヤリ見惚れていた唇から、突然に飛び出す言葉。
…婚約。
もう……そこまで…。
それは私達の甘く揺らめいていた時間が、終わる事を意味している。
……泣かない。
泣かないわ。
笑って“おめでとう”と言うの。
私は大丈夫だと、あなたなんかいなくても歩いていけると。
……だけど、私は女優なんかじゃない。
大根芝居で彼を騙しおおせる訳がないわ。
「……」
何も言えずにただ、黙る。
重く、冷たい沈黙が、先ほどの甘く気だるい空気を急激に覆っていく。