初恋〜sweet×bitter〜
資料室に着いてから、結城くんは資料の片付けまで手伝ってくれた。
「結局、ほとんど仕事手伝ってもらっちゃって…ゴメンね」
「……別に」
そう言うと結城くんは少しだけ顔を赤くした。
「仕事も終わったし、戻るか」
「えっ…。結城くんの仕事は……?」
「それはもう終わったからいい」
「でも、さっきいた廊下からここまでずっと一緒だったけど、仕事なんてやってなかったよね?」
「…………」
「結城くんの仕事って何だったの?」
結城くんは呆れたような、でもちょっとだけイジワルそうな顔をしてから
「……自分で考えろ」
そう言うと後ろを向いてしまった。
(結城くんの仕事ってなんだったんだろ…)
「……早く戻ろう。 まだ仕事残ってる」
「う、うん」
結城くんにそう言われてまだ他にも仕事があるのを思い出した。
(早く戻らないと、みんなに迷惑かけちゃう……!)
私は慌ててドアを開けようとした。
―ガシャン!
(………あれ?)
もう一度開けようとしたけど……。
―ガシャン! ガシャン!
「何やってんだ?」
「ど、ドアが開かない……」
そう言うと結城くんが私のすぐ傍に来た。
「…は!? ちょっと、退いて」
―ガシャン! ガシャン! ガシャン!
結城くんが何回かドアを開けようとしたけど、ドアはやっぱり開かない。
「開かない……」
「な、なんで開かないの…?」
私がそう言うと結城くんは、明らかに不機嫌そうに言った。
「……知ってたらとっくに自分で開けてる」
(怒らせちゃった! えっと…。とにかく、謝らないと!)
「ご、ごめんね」
「何で謝んの?」
意外な答えが返ってきたので私はびっくりした。
「お、怒ってないの……?」
「……なんで? 水瀬、なんか悪いことしたっけ?」
「私が1人でちゃんと仕事出来ていれば、結城くんは閉じ込められなかったし……。それに、さっき無責任なこと聞いちゃったし……」
「別に…そんなことで俺は怒らない」
「そっか」
(良かった…)