触れることもできない君に、接吻を
「別に大したことじゃない。映画見て、感動して泣いただけ!」

俺はおどけてそう言った。
そのおどけは、無意識的に本音を隠そうとした。

だが由梨は俺の言葉に眉を顰めた。

「嘘だよね、それ。だって……あの時のあなた、ものすごく悲しそうな顔してたもの」

俯きながら、由梨がそう言い放った。
その言葉に、恥ずかしさと嫌悪が混じった感情が体の中を駆け巡る。

なんて答えればいいかと思い、由梨の顔を覗き込むようにして見た。
するとそこには、俺を同情するような、哀れな目つきがあった。

それを見た途端、俺は全身が熱くなったのを感じた。
火照る程度じゃなく、燃え上がるような熱さ。
それと同時に込み上げてくる、苛々。

「関係ねえことに首突っ込むんじゃねえよ!」

気付けば俺は叫んでいた。
走ったわけでもないのに、息切れがした。
酸素が不足してしまったように苦しくなり、酸素を吸い込むたびに喉がひゅーひゅーとうなった。

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