触れることもできない君に、接吻を
そんなとき、呟きが耳に入ってきた。
その呟きの中には、俺の名前が入っていた。

「あ、真人……」

俺はびくつきながらも、その声の聞こえる方向を向くと、さっきまで俺のことを話していた二人がこちらを見ていた。

「……今の話、聞いてた?」

おずおずと聞いてくる男子はに、俺は首を横に振った。
冷や汗を拭いながら、精一杯の笑顔を作って答える。

「別に聞いてなかったけど、何の話だったの? 俺も混ぜてよ」

だけど声が上擦った。
微かだけど震えていた。
その震えを止まらせようと手を握り締めたが、効果はなかった。
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