触れることもできない君に、接吻を
だがそんな俺の状態に二人は気付いていないらしく、二人の顔には笑顔が戻った。
そして元気よく喋る。
嘘を。

「さっき、お前の話してたんだぜ? 俺らみたいな地味な奴相手にしてくれて、俺らマジで感謝してるー! って」
「そうそう。俺、生まれ変わるなら真人になりたいし」

二人の口から溢れてくる嘘に、俺は耳を塞ぎたくなった。

そんな平気な顔をして、笑顔を浮かばせながら、嘘をついているなんて。
俺はいつも騙されていたんだ。

そう思うと辛くて。
だけど反対に俺が嘘をつくわけにもいかなくて。

「そんなこと、ないよ?」

頬を生温かい液体が伝っていた。
自分の意思とは関係なく。
まるで無言で俺の悲しさを伝えようとしているかのように。
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