触れることもできない君に、接吻を
人を信じられなくなった。
人があんなに平気に嘘をつけるものだと、知ってしまったから。

「あれ? あ、ごめ……」

俺は制服の袖で涙を拭ったけれども、涙は留めなく溢れる。
二人はそんな俺に、心配そうな表情で近寄ってくる。

「大丈夫かよ、真人」
「何かあったのか? 相談してくれよ。友達だろ」

その言葉を聞くたびに、俺は呪いにかけられたように苦しくなった。

これ以上そんな優しい言葉で俺を惑わせるな。
笑顔の裏に憎しみが潜んでいることを、知っているんだぞ!


気持ちは、悲しみは、爆発寸前だった。


――気付けば俺は、あの公園へと走っていた。
早く独りになりたくて。


そして由梨に会った、ということだ。
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