触れることもできない君に、接吻を
「あー……くっそ。情けねえ……」

俺はおもむろに呟いた。
あのときに泣いていなければ、なんとか涙を我慢していれば、こんなことにはならなかった。
だが仕方なかったのだ。
俺の意思とは関係なく涙がぼろぼろと零れてきて、止めようにも止められなかったのだから。

なぜそのことが、俺がいじめられていることに結び付けられるかと言うと、裕大は暗くてうじうじした奴が嫌いなのだ。
あの会話を聞いてしまってからの俺は、人と目を合わせるのが怖くなり、さらに話すことも億劫になり、まさに裕大の嫌いな奴にぴったり当て嵌まってしまったのだ。
とはいっても、まだ俺がそうなって二日しか経っていない。
ここまで拡大するものなのか。

俺は裕大に破滅に陥れられてしまった奴等のことを見てきた。
俺もいつかああなるんだろうと予測はしていたが、これは予想以上にひどい。

俺は目を静かに伏せた。

「……静か、だなぁ」

何の音も聞こえない。
まるでこの空間だけ隔離されているようだ。
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