触れることもできない君に、接吻を
そんなとき、静寂を破るかのように自分の腹が鳴った。
俺の腹時計が正しいならば、きっと今は正午だろう。
今頃裕大たちは給食にありついているのだろうと思うと、なんだかムカついてきた。

俺は空腹で気持ち悪くなってきたので、ふらつく足でぐちょぐちょとした地面に座ると、何かないかと鞄を漁っていた。
すると昨日の給食の残りのパンが出てきた。
これは由梨に渡そうと思って持ち帰ったのだが、結局由梨にも渡らずこの中にあったのだ。

俺は躊躇せず、そのパンを口に入れた。

だがその直後、顔を苦痛に歪めた。
そして迷わずに土の上に、唾液と混ざってしまったパンを吐き出す。

「うわ、まず……。湿気てるじゃん、これ」

だけどまだ口に感触や味は残っていて、俺の口の中は気持ち悪いままだった。
余計に気持ち悪くなった。
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