触れることもできない君に、接吻を
さて、何か空腹を満たすものはないか。
そう思ってまた鞄をまさぐってみるが、なにも見つからない。

今更学校に行くのは気が引けるし、家に帰れば母さんに怒られるだろうし、何かを買おうと思ってもお金がない。
俺は盛大な溜め息と共に、その場に座り込んだ。
本当に俺はついていない。

「そういえば、由梨……どうしてっかな」

そんなとき脳裏に浮かんだのは、由梨だった。
あの長い髪を垂らして、今日もあのベンチに座っているのだろうか。
だとしたら、かなり退屈しているはず。

「じゃあ、退屈しのぎに行きますか」

俺はそう結論を出すと、立ち上がった。
さっきまで空腹でへたばっていたというのに、なぜか力が漲ってくる。

俺は力を足に込めると、勢いよく地面を蹴った。
会ったらすぐに昨日のことを謝ろうと心に決めて。
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