触れることもできない君に、接吻を

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しばらくして、由梨は落ち着きを取り戻したようだった。
泣き腫らした目で、こちらを見て微笑んでいる。
だけどその微笑みは自然なものなんかじゃなく、無理して創っているようだった。

俺はベンチから立ち上がると、由梨の方に歩み寄った。
すると彼女はまた微笑んで、枯れた声を振り絞るように言った。

「ごめんね。あなた、わたしの何でもないのに、こんなにしてもらって」
「別に気にしなくてもいい。ていうか、今日もここにお泊まり?」

こくりと由梨に頷く。
俺はもうやめろとは言わないことにした。
これ以上何かを言ってしまったら、彼女が壊れてしまいそうだったから。
それくらいに今の彼女は弱りきっていたのだ。
少しの衝撃にも堪え兼ねないだろう。
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