触れることもできない君に、接吻を
「……明日も、来るから。もっとお前のこと色々調べるからさ。なあ、もっと俺を頼ってくれてもいいんだぜ?」

俺はしゃがみ込み、彼女の顔を見ながら言う。
するとじわじわと彼女の目が潤んできて、気付くと彼女の目からぼろぼろと涙が流れていた。

「そんなに頼りないか、俺。まあ、まだ会ったばかりだし。だけどお前、周りに俺しかいないみたいだし、俺意外に誰が心配してくれるっていうんだよ。な?」

少し焦った。戸惑った。
こんなに女と長く話したことはなかったし、泣かれることも初めてだったからだ。

すると俺の言葉に反応してか、彼女の濡れた目がこちらを見ていた。
その目は何か言いたそうで、俺はそれをできるだけ優しく促した。

「ほら、言ってみろよ」

こくりと由梨が頷いたので、俺は彼女の隣に座りなおした。
< 34 / 83 >

この作品をシェア

pagetop