触れることもできない君に、接吻を
「なんだかすごく疲れているみたい。真人くんって、サボるような人に見えないもん。今日、学校で何かあったんでしょ?」

それはあまり触れてほしくない話題だった。
俺はあまり深く考えように、有りっ丈の笑みでとぼけてみせる。

「そんなことない。俺、あんま真面目じゃないし、サボりとかよくするけど」

だけど由梨には全て見抜かれる。
それは俺が嘘を吐くのが下手なわけではなく、彼女にはそういう素質があるのだと思った。

「どうしてわたしに嘘を吐くの? 真人くんは信用してくれって言ったじゃない。それなのに、なんで?」

少し腫れた目は、きゅっと吊り上っていた。
俺は黙ってしまった。
返す言葉が、全く浮かばなかったのだ。
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