触れることもできない君に、接吻を
「わたしだって真人くんの役に立ちたい。だけど本当のことを言ってくれなきゃ、何も手伝ってあげられないよ」

由梨がすがるような目で見てきた。

俺はその言葉に頷きたかった。
そして相談したかった。
辛いから、助けてくれと。

だけど一番に彼女にそんなことを知られてほしくはないと思った。
助けを乞う行為は、自分が小心者で、情けないということを彼女に打ち明けるという行為と繋がれていた。

薄っぺらい、今にも破れそうな俺のプライドのためだ。
他人にしてみれば馬鹿らしいかもしれない。
たった一言で地獄から救われるのに、それを言わないなんて、と。

だけどきっと、俺は由梨のことが好きだ。
だから尚更、その気持ちは強まる。
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