触れることもできない君に、接吻を
「……ごめん。言えない」
俺はそう言うと、立ち上がった。
由梨が驚いたように目を丸くしてこちらを見ていた。
「それじゃあ、また明日。学校終わったら、すぐ行くから。お土産に情報を持って」
俺はそう言うと、階段の方へと駆けた。
階段を下りているとき、由梨の視線が気になった。
じっとりと背中を焼くように這う、由梨の視線。
だが、俺は振り向かなかった。
きっと後ろでは悲しそうに目を細める由梨が立っているのだろう。
そう思いながら、俺は階段を下り終えた。
まだお日様は俺の真上にいて、俺はこれからどうしようとその場に座り込んだ。