触れることもできない君に、接吻を
使えるのは聴覚。
頼れるのは耳だけだ。

口の中に広がる、微妙な味。
それが食べ物だということは分かったが、何なのか分からなかった。

「食べろよな。ちゃあんと」

裕大の嫌みったらしい笑みが想像できた。
俺は仕方なく口の中に入れられたものを噛んだ。
くちゃくちゃと音が鳴る。
それは何故だか俺を不愉快にさせた。

この少しの甘みと、ふわふわの感触。
きっとパンだろう。
そうえいば今日の給食もパンだった。
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