触れることもできない君に、接吻を
これ、今日の給食の残飯だ。
みんなが食べ残したものを一つの食缶にいれたものの一部だ。

急に吐き気が催してきた。
あの給食のおかずが無残にも色々と混ぜ合わさったものを食べていると思うと、物凄く気持ち悪い。

いくらお腹が空いていると言っても、これは無理だ。

俺は勢いよく口の中にあるものを舌で吐き出した。
ちょうど裕大にかかってしまったのか、裕大の喚き声が聞こえた。
その際に体を掴んでいた腕が緩んだので、俺はその機会を逃さず、思い切り身を捩った。

不意打ちだったのか、意外にも簡単に俺の体は解放された。

「あっ、真人が!」

必死で制服についた残飯を払っていた裕大が、その誰かの一言でこちらを向いた。
俺は裕大の顔を見た途端、驚いて後ずさってしまった。

憤怒の表情がよく出ている。
額に皺がよっていて、ものすごく怖い。
そのことで、裕大が本気で怒っているのだと気付いた。
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