触れることもできない君に、接吻を
だけど俺の言葉に由梨は黙ったままだった。
賛成ではないのだろうか。
何か不都合があるのだろうか。

俺は由梨の顔を覗き込んで尋ねた。
すると由梨は悲しげに微笑んで呟いた。

「わたし、死んでるんだよ。もうこの世にいないの。いちゃいけないの。死んだってことは、全てが終わってしまったってことなんだよ」

俺はその言葉に反論したかったが、由梨がそれを制した。
俺は口篭りながらも仕方なく由梨の言葉を待つ。

「それに気持ち悪いもん。ユーレイが会いに行くなんて。死んだ人間が、言い忘れたから会いに来ちゃったって、おかしいよね。普通に考えて」

「気持ち悪くなんてない! おかしくもねえよ! だって、現に、俺がこうやって一緒に喋ってるじゃん!」

俺は後ろ向きなその言葉に、精一杯叫んだ。
由梨は驚いたように目を真ん丸くしてこちらを見ていたけれど、しばらくしてその目はゆっくりと伏せられた。

「それに……その考えって死のことを簡単に思っているみたいで、嫌だな」
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