触れることもできない君に、接吻を
死。
全く縁のない言葉。
俺は今までに一度も死に立ち会ったことがなかった。
だから由梨の言うとおり、死の重さも知らない。
「……わたし、記憶少しだけ思い出したって言ったよね。それ、殺される間際の記憶なの」
俺は無意識に目を見開いた。
驚いて無表情の由梨を見つめていると、段々と目の表面が乾いて痛くなってきた。
俺が何かを言う前に、捲くし立てるような口調で言った。
「苦しくて、怖くて、仕方がなかった。そんなときほど、生きたいって強く願っちゃって。だけどそれと反対に楽になりたいって気持ちの方が大きくなっていった。
瞬間的な記憶だよ。本当に少ししかない。だけどひしひしと伝わってきた。死に直面するときの恐怖とか、安堵感とか。今でも思い出すたびに怖くってたまらない」
そして、だから、と付けたし、言いにくそうに口篭った。
「だからね、わたし、誰にも会わない。真人くん以外の人と接触しないって決めた。真人くんと喋れているだけでも感謝しなきゃいけないよ。ねっ」
恥ずかしそうに上目遣いで見てくる由梨。
俺は勢いに任せてこくりと頷いてしまった。
全く縁のない言葉。
俺は今までに一度も死に立ち会ったことがなかった。
だから由梨の言うとおり、死の重さも知らない。
「……わたし、記憶少しだけ思い出したって言ったよね。それ、殺される間際の記憶なの」
俺は無意識に目を見開いた。
驚いて無表情の由梨を見つめていると、段々と目の表面が乾いて痛くなってきた。
俺が何かを言う前に、捲くし立てるような口調で言った。
「苦しくて、怖くて、仕方がなかった。そんなときほど、生きたいって強く願っちゃって。だけどそれと反対に楽になりたいって気持ちの方が大きくなっていった。
瞬間的な記憶だよ。本当に少ししかない。だけどひしひしと伝わってきた。死に直面するときの恐怖とか、安堵感とか。今でも思い出すたびに怖くってたまらない」
そして、だから、と付けたし、言いにくそうに口篭った。
「だからね、わたし、誰にも会わない。真人くん以外の人と接触しないって決めた。真人くんと喋れているだけでも感謝しなきゃいけないよ。ねっ」
恥ずかしそうに上目遣いで見てくる由梨。
俺は勢いに任せてこくりと頷いてしまった。