触れることもできない君に、接吻を
だけど心配になって、念を押す。

「でも、本当にいいのか? もしかしたら死んだ奴らってのはみんなこういう経験をしているかもしれないんだぞ」

由梨は俺の質問に少し戸惑いながらも、いいんだよと控え目に呟いた。

死後の世界なんて、死んだ奴じゃないと分からない。
したがって俺は何の情報も持っていない。
だから一つ一つの言葉に責任なんて持てないけれど、一応常識というものなら持っている。

だけど由梨が別にいいと言うのなら仕方ない。
俺はこの話を打ち切ることにした。

「それで、ちょっと質問。さっき記憶が戻ったこと言ってたよな。お前を殺した犯人とか分かったか?」

そしてさっき気になったことを聞いた。
だが由梨は困ったような表情を浮かべるだけ。

俺はやっとその表情の意味が分かり、目の前で手をぶんぶんと振った。

「あっ、ごめん! そうだよな。思い出したくないよな。だけど俺、カウンセリングみたいのじゃないから、礼儀とか分からないし!」

そして言い訳ともいえないような幼稚な文章を羅列させた。
すると意外にも由梨はくすりと馬鹿にするように笑った。
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