儚恋。



唇が触れて数秒が経つと
ゆっくりと
彼は私から離れた。



「じゃあ、
弥途も僕のこと“蛍”って
呼べばいい。
それでお互い様でしょ?」


「……ッ」



――――最低。

キスしといて
どうして呼び捨ての話をしてるの!?


私は自然と涙を流した。


それに気付いた高原蛍は
頬を伝う涙を
指で拭ってくれた。



「さいってぇ-…」


雄都くん達に聞こえないように精一杯の小さい声で訴えた。


すると
高原蛍は何故か悲しい顔をするんだ。



「僕の気持ちも知らないくせに…」




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