儚恋。
そう意味ありげな言葉を残すと
静かに蛍は、図書室から
出ていった。
「なによ、アイツ…」
私のファーストキス奪っておいて。
そして遠くから
大好きな人の笑い声が聞こえてくる。
「もぉ…やだっ」
彼が去ったあと
さっきまで忘れてかけていた切なさを感じて、
また うずくまった。
――――。
図書室の外では、
高原蛍が廊下をとぼとぼ歩いて帰っていた。
弥途が雄都を好きな限り、
僕たちは会える。
だって君は雄都を追って
毎日、図書室へ
来ているのだから……
そう思い、
高原蛍は再び歩み出した。