三日月と雨。
夢一夜。
日曜日の夜
「いたっ」
自分以外誰もいない部屋で、由紀子はひとりごちた。
左手の親指に出来たささくれをとろうとしたら、ささくれが思った以上に深く裂けてしまったのだ。
由紀子はペン立てにあった爪切りを取って、ささくれを切り取った。
―――初めからこうしておけばよかった。
爪切りを片しながら、由紀子は思う。
小さい時からささくれを引っ張って痛い思いをしては、母親に注意されていたことを思い出す。
―――成長してないのねえ、私。
由紀子は、ピンク色の皮膚がちょっぴりのぞいた親指をさすりながら思う。