三日月と雨。



いつからだろう。

眠りに入るのに、時間がかかりはじめたのは。

由紀子は、窓際に胡座をかいてタバコを一本取り出し、口にくわえた。力を込めて、ライターをつける。

かちり。

火をつけて、ライターを放る。

最近のライターは、火遊び防止のためだかなんだか知らないけど、使いにくい。
だからといって、ジッポを使う程の愛煙家でもないので、100円ライターのままだ。

だいたい、使い捨てライターを使いにくくしようがしまいが、事故は起こるじゃない。

由紀子は思う。

小学生の時に火遊びをして怒られた男の子たちがいたけど、先生たちは本当に、こっぴどくその子たちを叱っていた。

それは誰のためでもない、その子たちのために、だ。

それがきっと今の親は、


―――悪いのは子どもじゃない。

―――悪いのは子どもが遊べるように作ったライター会社だ。


そういって、叱った先生に噛み付くのだろう。

ライター会社にも苦情が行く。

そうしてライター会社は、せっかく便利になったものを不便にする。

いい迷惑だ。

由紀子はタバコ吸い込む。

ライターで遊ばせるような性格にしたのは、あんたたちだよ。

本当に頭のいい子なら、ばれないように、危険のないようにきちんとやるよ。

危ない危ない、と危険な物に近づかせないから、限度を知らない馬鹿野郎に育つんだよ。

由紀子は見知らぬモンスターペアレンツに毒づいた。

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