三日月と雨。



由紀子は小さなキッチンに立つ。

二口コンロの片方で、やかんにお湯を沸かしながら、ごりごりと簡単な作りの木製のミルでコーヒー豆を挽く。

誰かの結婚式の引き出物で頼んだそのミルを挽くことが、由紀子の朝の日課だった。

低血圧気味の身体を目覚めさせるための運動だ。

そう考えていただけだったが、挽きたての豆で煎れるコーヒーが思った以上に美味しくて、面倒に思えるこの行動が習慣になったのだ。

挽いた豆を、ペーパーを敷いたドリッパーに入れる。

ドリッパーをタンブラーに設置して、沸いたお湯を注いでいく。

出来たコーヒーに牛乳と砂糖を加えて、キッチンに立ったまま、ひとくち、ふたくち、啜る。
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