美しいあの人
あたしは怪訝な顔をした。
「それをあたしが書いたか祐治が書いたかが重要なの?」
松井さんはそれには答えなかった。
「彼の写真があったら見せてくれないか」
松井さんは真剣だった。
あたしがどんな男とつきあっているのか知りたいとか、そういった興味ではないようだ。
松井さんには彼なりに祐治の写真を見る必要があるのだろう。
あたしは断る理由も見つけられずに、携帯にある祐治の写真を松井さんに見せる。
「ああ、確かに男前だ。着ている服も趣味がいい」
「その服は」
「美人の婚約者が買っているんだろう」
あたしは、祐治とのなにもかもを綴ったことを激しく後悔した。
けれど、あたしに書けることはそれしかなかったのだ。
「ダメもとで聞くけど。その婚約者の写真はあったりしないか」
「あるわけないでしょう」
「だよなあ」
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