美しいあの人
松井さんは憮然としている芙美子さんに、挨拶もそこそこに頭を下げた。
「お願いがあります。西条祐治を作家にするのに協力してください」
「協力もなにも、祐治が作家になんてなれるわけないじゃない。
そんなのエリさんだってわかってるでしょ」
芙美子さんは、松井さんへの返答を思いつかなかったからか、
あたしに同意を求めてきた。あたしも困惑する。
「ああまあ、祐治には小説は書けませんけど……」
松井さんが顔をあげて、真剣な顔で芙美子さんを見つめた。
芙美子さんが狼狽した。
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