美しいあの人
仕事を終えて更衣室で携帯をチェックしたら、
松井さんからメールが来ていた。
「昨日眠そうだったけど大丈夫だったか? 
エリちゃんがきらきらしたライターを店に忘れて行った、
取りにくるならいつでもどうぞと千鶴から伝言です」

口実が出来たと思った。

今日行ったところであの美しい人はいないかもしれないけれど、
あたしと松井さんが帰った時にはまだいたから、
千鶴さんから話が聞けるかもしれない。

デコレーションしているライターだから、
千鶴さんはわざわざ松井さんに連絡してくれたんだろう。
だけどあんなの安物だ。
なくしても構わないような安いデコライターを
あたしはバッグにいくつか放り込んである。
忘れてきたのはそのうちの一つだ。

だから別に取りに行かなくっても全然構わないんだけれど、
ひとりでせんぱづるに行く口実が出来たから、ライターを取りに行こう。

お先に失礼しまーすと、明るく更衣室を出た。
この明るさは、無理矢理作ったものじゃない。


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