美しいあの人
祐治に原稿を書いている気分を味わわせるため、
普段はあたしの家に居続けることになるというのには芙美子さんは最初難色を示したが、
あたしが表には出ないこと、あたしが原稿を書いているのは秘密であることを説明した。
そしてマネージメント役である芙美子さんが恋人であることを公表して構わなくて、
むしろそれは美しい作家に美しいパートナーがいるということであり、
作家として売り出すための底上げには
ぜひとも芙美子さんのような美しい人が必要なのだという
松井さんの説得に芙美子さんは首を縦に振った。

芙美子さんは芙美子さんで、祐治がプロ作家として売り出されること、
またそれが文章だけでなく
祐治の外見と芙美子さんも含めての商品であるということを素早く計算し、
勝ち誇ったような笑顔であたしに言った。
「わかったわ。私にできることならやりましょう。
エリさんは祐治と私のために執筆を頑張ってくれるんだものね」
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